このブログでは、五大商社の取り組みについて解説します。現在、商社は絶好調で、各社が好決算を続出しています。なぜこれほどの好決算を出しているのか、その原因とともに、石炭からの脱却、水素への取り組み、アンモニアの活用、その他の取り組みについて詳しく見ていきます。この記事を読むと、脱炭素に対する五大商社の取り組み度合いの違いが分かり、投資基準の参考になるでしょう。
目次純利益の推移と資源高の影響
五大商社(伊藤忠商事、三井物産、三菱商事、丸紅、住友商事)はそれぞれ純利益の推移を示しており、2020年から2021年、そして今期予想までの3年間で見ると、特に伊藤忠商事と三井物産が過去最高の利益を出す予定です。
- 資源高の影響: この好調の原因として、まず資源高が挙げられます。例えば、100グラム100円で売れていたものが150円で売れるようになったことが利益に大きく寄与しています。
- 経済回復と需要増加: 2020年のコロナ禍で経済が停滞していましたが、感染者数の減少に伴う経済の回復と中国の景気刺激策により、急激に景気が良くなり、需要が増えました。
- 鉄鉱石と石炭の価格上昇: 特に鉄鉱石と石炭の価格が上がり、商社の利益に大きく貢献しました。
三井物産の決算資料からも、金属資源事業が大きく伸びており、鉄鉱石事業の販売価格上昇、石炭事業の販売価格上昇が増減理由として挙げられています。
資源価格の未来と脱炭素への影響
鉄鉱石と石炭の価格はいつか終わりを迎えます。三井物産の社長も、資源価格高騰は長続きしないと述べています。これは、脱炭素に反しているからです。
- 製鉄方法とCO2排出: 製鉄には「高炉」と「電炉」の2種類の方法があります。高炉はCO2の排出が多く、鉄鉱石と石炭を使った方法です。一方、電炉は鉄スクラップを放電熱で溶かして不純物を取り除く方法で、CO2排出と必要なエネルギーが約8割減となります。しかし、不純物が残るため、車など見た目が重要なものには使えません。
- 将来的な展望: 経済が回復している途中であるため、中期的には資源高は続くと思われます。ただし、長期的には鉄鉱石と石炭の使用が減少し、電炉へのシフトが進むと考えられます。これは、日本の大手企業として脱炭素に取り組む必要があるためです。
石炭関連事業の売却
五大商社は石炭関連事業の売却を進めています。これにより、脱炭素に向けた取り組みを強化しています。
- 丸紅: 2016年に一般炭の事業を全て売却しました。一般炭は発電用の石炭です。
- 三菱商事: 2018年に一般炭の事業を全て売却しました。
- 三井物産: 2018年に一般炭事業の一部を売却し、現在も若干の事業が残っています。
- 伊藤忠商事: 2021年に一般炭事業の一部を売却予定で、2023年度までには全て売却する予定です。
- 住友商事: 一般炭事業の割合が最も多く、2030年度までに全て売却予定です。
将来的には、五大商社すべてが一般炭事業を売却し、原料炭(製鉄用の石炭)だけが残る見込みです。
水素エネルギーへの取り組み
水素は脱炭素社会において重要な役割を果たすとされています。燃料電池は水素と酸素を化学反応させて発電するもので、温室効果ガスを排出しません。しかし、課題も多く、実現にはまだ時間がかかります。
- 燃料電池のコスト: 製造コストが高く、水素の供給インフラも確立されていません。
- 供給インフラの未整備: 水素の製造、保管、輸送方法が整っていないため、事業として確立するには時間がかかると考えられます。
各商社の取り組みを見てみましょう。
- 丸紅: 岩谷産業や川崎重工、関西電力とともに、水素の大規模製造、輸送の商用化モデルを検討しています。
- 三井物産: アメリカの水素ステーション開発運営を行うファーストエレメントフューエル社に出資し、ニュージーランドで大型車向けのグリーン水素ステーションの商業化を手がけるHRNZ社にも出資しています。
- 三菱商事: 千代田化工建設とともに、シンガポールやオランダで水素の供給インフラ構築を行い、カナダでの水素製造、日本への輸出も検討しています。
- 伊藤忠商事: 伊藤忠エネクスやエアリキードとともに、国内の水素供給網の構築を検討しています。中部地方に世界最大級のプラントを設置する予定です。
- 住友商事: リオティントとオーストラリアでグリーン水素の製造販売を検討しています。
これらの取り組みから分かるように、水素エネルギーの商業化にはまだ時間がかかる見込みです。
アンモニア燃料の可能性
アンモニアは脱炭素社会において期待される燃料の一つです。船の燃料や火力発電の燃料として使われることが想定されています。アンモニアの利用には以下のメリットと課題があります。
- メリット:
- 温室効果ガスを排出しない
- 水素よりも輸送・貯蔵が容易
- 課題:
- 燃焼時に有害物質である窒素酸化物が発生する
各商社の取り組みを見てみましょう。
- 丸紅: IHIやウッドサイドエナジー社とオーストラリアでグリーンアンモニアの製造・輸出を検討しています。
- 三井物産: オーストラリアでウエスファーマーズ社と燃料アンモニアの生産を検討し、2028年に日本に100万トンを輸出する予定です。アメリカのインダストリーズ社とブルーアンモニアの生産供給も検討しています。
- 三菱商事: 2020年代後半にアメリカで燃料用アンモニアの生産を開始し、同時期にカナダでも生産を開始します。
- 伊藤忠商事: 2026年カナダで燃料用アンモニアの生産を開始し、東洋エンジニアリングとシベリアで生産したアンモニアの国内輸送を検討しています。
- 住友商事: 海外企業とシンガポールで船舶向けの燃料アンモニアの供給を検討しています。
アンモニアに関する取り組みは、水素エネルギーに比べて進展が見込まれ、数年後には業績に貢献する可能性があります。
その他の脱炭素取り組み
各商社は、脱炭素に向けた様々な取り組みを進めています。
- 丸紅: 秋田県秋田港の洋上風力発電事業に参画し、この事業を進める会社の筆頭株主となっています。
- 三井物産: イギリスのCCS(Carbon Capture and Storage)技術を手掛けるストレッタキャプチャーテクノロジー社に出資し、経済産業省とCCSの取引ルールの策定を目指しています。
- 三菱商事: アメリカのデンバリ社とメキシコ湾岸でのCCSプロジェクトを進め、オランダのエネルギー会社エネコを買収しました。エネコは再生エネルギーを手掛ける大手企業で、600万世帯の顧客を持っています。
- 伊藤忠商事: 家庭用の蓄電池「スマートスター」のサブスクを開始し、日本製鉄と液化CO2の輸送実験を進めています。また、いすゞとバッテリー交換式のEVトラックの開発も行っています。
- 住友商事: イギリスの洋上風力発電事業に参画し、国内企業2社とともに日本最大規模の洋上風力発電所を建設予定です。2024年に着工予定です。
これらの取り組みから、脱炭素に向けた商社の努力が伺えます。
まとめ
現在、三井物産などが非常に好決算を出している理由は、鉄鉱石や石炭の価格が上がっているからです。しかし、将来的には鉄鉱石は堅調かもしれませんが、石炭に関しては逆風が予想されます。各社が水素の製造や出資を進めていますが、課題が多く、事業化はまだ先となりそうです。それよりも先に、燃料アンモニアやCCSの方が数年後には実現する可能性が高いです。
各商社の脱炭素への取り組み度合いをまとめると、三菱商事が特に積極的であり、三井物産もCCSに関しては五大商社の中で一歩先を行っています。丸紅と伊藤忠商事も水素とアンモニアの製造供給インフラに投資しており、住友商事は石炭火力の事業がまだ多く残っているため、取り組み度合いがやや弱い印象です。
利点と欠点
利点
1. 詳細な解説: 五大商社の取り組みについて詳細に解説しており、投資家にとって有益な情報が満載です。
2. 脱炭素の重要性: 脱炭素に向けた各商社の取り組み度合いが明確に分かり、投資判断の基準となります。
3. 長期的な視点: 資源価格の未来や脱炭素の影響を長期的な視点で考察しており、将来の見通しが立てやすくなります。
欠点
1. 専門用語の多用: 一部の読者には専門用語が難解に感じられるかもしれません。
2. 情報の多さ: 情報が多岐にわたり、全てを把握するには時間がかかる可能性があります。
3. 特定の視点: 筆者の個人的な見解が含まれているため、必ずしも全ての読者に共感されるとは限りません。
関連する質問と回答
1. なぜ五大商社は好決算を出しているのですか?
五大商社が好決算を出している主な理由は、資源価格の高騰です。特に鉄鉱石と石炭の価格が上昇したことで、各社の利益が大幅に増加しています。
2. 脱炭素に向けた五大商社の取り組みは何ですか?
五大商社は、水素エネルギー、アンモニア燃料、CCS技術などに取り組んでいます。これにより、CO2排出を削減し、環境負荷を軽減することを目指しています。
3. 水素エネルギーの課題は何ですか?
水素エネルギーの主な課題は、製造コストの高さと供給インフラの未整備です。これにより、商業化にはまだ時間がかかると考えられています。
4. アンモニア燃料のメリットと課題は何ですか?
アンモニア燃料のメリットは、温室効果ガスを排出しないことと、水素よりも輸送・貯蔵が容易なことです。一方、課題としては、燃焼時に有害な窒素酸化物が発生することがあります。
5. 五大商社の中で、脱炭素に最も積極的な企業はどこですか?
三菱商事が最も積極的であり、4000億円を投じてEUのエネルギー会社を買収するなど、大規模な投資を行っています。また、三井物産もCCS技術に関して先進的な取り組みをしています。